名古屋の糖尿病専門医

糖尿病のスティグマとアドボカシー

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スティグマ とは 負のレッテル、恥、不信用の印 という意味

もしあなたが「糖尿病」と診断されたら、それを隠したいと思いますか?
隠したいと思ったらそれは「スティグマ」です。

・「糖尿病だから今日の飲み会に行くのはやめておこう」
・「生命保険に入れるのか心配」
・「またお菓子を食べてしまった 自分はだめな人間だ」

そのようなことを考えてしまったら、それも「スティグマ」です。
糖尿病を持つことは 恥じることではありません。隠す必要もありません。でもそんな雰囲気の社会になってしまっていることが問題なのです。

・糖尿病になった人は、食事や運動などの生活習慣に問題があったから病気になった
・糖尿病を持つ人は、寿命が短い

これは誤った見解です。

1型糖尿病は生活習慣とは全く無関係に発症します。どなたでも、ある日突然、1型糖尿病になる可能性があります。
2型糖尿病の主な原因は遺伝で、食事や運動に配慮した生活習慣でも、糖尿病になることがあります。
また、糖尿病を持つ人と持たない人が、40歳を過ぎてからあと何年生きるかを調べた統計では、両者の平均余命に違いはありませんでした。糖尿病を持つ人が定期的に通院された結果、他の病気が早期に見つかり、寿命が延びたという人もたくさんいらっしゃいます。

アドボカシー活動 とは 糖尿病を持つことを隠す必要のない社会を作るための活動

糖尿病を持つ人が、スティグマを感じずに、糖尿病のない人と同じような人生を送ることができる社会にするために、JADEC(日本糖尿病協会)を中心に様々な取り組みが行われています。

・糖尿病にまつわる言葉を見直すプロジェクト (スティグマを与える言葉を使わないようにします)
→詳細はこちら(外部サイトPDF)

・糖尿病の名称変更のための議論 (世界の共通語である Diabetes ダイアベティス が現在の候補です)

・JADECのアドボカシー活動
→詳細はこちら(外部サイト 日本糖尿病学会・JADEC(日本糖尿病協会)合同 アドボカシー活動|公益社団法人日本糖尿病協会)

糖尿病を持つ人の気持ちは?

糖尿病の名称変更について、1型糖尿病を持つ人から当院にお手紙をいただきました。糖尿病を持つ人との接し方について考えるきっかけにしていただければと考え、ご本人の許可をいただき、その一部をご紹介します。

北海道にお住いの30代女性

10歳の時に1型糖尿病を発症。当時はインスリン依存糖尿病という説明を受け子供ながらに一般的な糖尿病とは違うと理解していました。
小さい頃に友達の親が「お菓子ばかり食べていると○○ちゃんみたいになるよ」って言ってた時など、とても傷つくことが多くありました。病気の事を隠すようになり、食前の注射もトイレで済ませ、大人になって外食の機会も増えていくにつれ病名を言って誤解されることが嫌で、人と関わること自体嫌になってきました。

現在はそういう自分自身が面倒くさくなり、隠して生きて行くことも吹っ切れてなんと思われてもいいかと思うようになりました。会社での人付き合いで隠すことは難しいのも現状なので説明すると、必ず「そんな小さい頃からお菓子たくさん食べてたの?」「ポテトチップ食べ過ぎたの?」と言われ、付き合う中でも「食事制限しなくていいの?お酒飲んでいいの?」「私の知り合いワインばっかり飲んで糖尿になったよ?」「食べすぎたら糖尿悪化するもんね」と、全く1型糖尿病を理解されないのです。そしてみんな悪気がなく、むしろ心配してるような口ぶりなのです。説明をしても糖尿病のイメージが強すぎて全く理解されません。病気になっただけでも辛いのにその名称のせいでさらに辛い思いをしなければいけない現状。私が発症してから27年間、周囲の理解がなさすぎる現状に、どうしたらわかってもらえるのだろう・・・とずーっと思い続け今に至ります。

私が子供のころに味わった辛い気持ちを感じている子が今もいるはずです。名称が変わるだけで心が救われるはずです。それは1型・2型ともに同じだと思います。2型の方が感じられている差別や不信感、1型の人はさらに感じていると思います。

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→糖尿病の名称変更について

→糖尿病とは?